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Planet EYE 北海道から世界に通用する小型衛星の開発物語

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2006年11月 アーカイブ

2006年11月07日

百年の計としての宇宙開発

これまで宇宙開発に対する一般的な考え方は、「宇宙には夢がある」、「宇宙にはロマンがある」、「地球に危機が到来した際のノアの箱舟としての位置付け」、あるいは「軍事的優位性を誇示する象徴といった捉え方があった。まずヒトという種族の存在意義から宇宙開発の意義を再考してみたいと思う。
まず、ヒトという種族の特徴を一言で表現するならば、環境や社会の変化の中で常に精神的な進化を続けるところに特徴がある。霊長類という言葉が象徴するように、精神的進化こそがヒトの存在意義であると思われる。宇宙開発は人類に対して新たな精神的進化の環境を提供することができる。ここに宇宙開発の真の使命がある。
人類の歴史はとは、かつて部族(小さな国)という単位で生活していた時代から国境を越えた国家間同士の関係・摩擦の繰り返しでもあった。このような環境変化はヒトにとっての世界観の拡大と言語や思想を超えた共通点の発見と個々の小さな利害を統合しうる大いなる発展への認識の跳躍を与えるものであった事実に着目する必要がある。このように、肉体の進化ではなく、精神的進化こそがヒトの存在意義であり、また存在価値であると思われる。
19世紀以降の科学技術の発展に伴い、現在ではヒトの生活圏は全地球規模に及んでいる。これに伴って発生した地球上の問題として次のようなものがある。
?民族間紛争
?人口爆発
?食糧問題
?地球環境問題
?資源の枯渇
20世紀前半までであれば、これらの問題により世界大戦が起きたものだが、現在は武力から経済的手段に置換された形で行われているのが現実といえる。(注:例えばM&Aは100年前の戦争ともいえる現象である。)
以上の観点から、これらの問題を解決できるだけのグランド・ビジョンとその啓蒙が必要である。

1970年代にローマクラブは経済活動、農業生産、地下資源の利用、環境破壊など人類の生活を維持するための全ての活動を進めた場合、全地球規模ではどのような結末になるのだという観点から数値シミュレーションを行った。計算の結論として、ローマクラブはこのままの状態で進むならば21世紀後半には人類は滅亡することを予言した。この予言は回避できないものなのか、あるいは第3の道があるのかどうかを次に考えてみたいと思う。
ワールドモデルでは当時の社会の連関を前提に組み立てられていたことから、疑いようのない社会モデルのように思われた。しかし、そこでは全ての現象を縁とする環境の中で閉じていること(因果が地球で閉じていること)を暗黙の前提としているに気づかねばならない。実はここに未来への希望の光があり、次の2つの可能性が提唱されている。

?人類の経済活動が地球の自然システムの限界を超えつつあることから、循環型の持続可能な経済体制への転換が必要である。(地球環境学者のレスター・ブラウン氏)

?人類の生活圏を宇宙(月)に拡大することにより、22世紀以降の継続的発展がワールドモデルを用いた数値シミュレーションにより予測されている。(静岡大 山極芳樹氏)

 先にヒトは先進的に進化することが目的であり、その為には科学による環境の進歩と精神性の向上の両者が相補的に進化することが重要であることを述べた。ここでは2つの視点から問題解決の方向性について述べる。
第一に、科学技術におけるイノベーションの方向性として、人類は「宇宙」を生活圏に取り込むことを視野に入れた、永続的生存可能な環境を追求するべきである。従って、21世紀の今という時期から宇宙へのフロンティアを拓き、人類としての新たな“因”を植える必要がある。 
 第二に、精神性におけるイノベーションの方向性として、国家や民族を超え、Give & Takeの発想から、資源、技術、才能、情報、経験、教育など、あるものをお互いに出し合うマインドへの発想の転換が必要である。東京大学大学院の松井孝典教授は、「類は地球をレンタルしていることを再認識すべきである。宇宙人として俯瞰した視点が不可欠である」と指摘している。やはり、人類の未来に対する利他の投資のマインドが必要なのである。

人類にとっての新たな生活圏(新しい時空間)を作るための準備を今から始めるべきである。同時に、宇宙時代の主役は、そこで生活する“人間”、つまり“個人”であることに私たちは気づかねばならない。ロケットや衛星は手段でしかなく、宇宙開発そのものが目的ではない。一人ひとりの精神性を向上させること、つまり人類の精神性の進化に貢献することが宇宙開発の使命だといえる。
従って、百年の計として、月面都市の建設を目標に民間主導の投資事業を立ち上げることを近未来の目標とするべきである。宇宙の啓蒙活動が浸透し、ある程度まで宇宙が日常化してきた段階から、世界の人々の賛同を得ながら宇宙開発事業債を作り、孫・曾孫の時代を見据えた未来への投資事業を始めるべきである。(宇宙開発事業債の償還期間を50年とする。)

プロフィール:佐鳥 新

北海道工業大学 電気電子工学科 助教授、北海道衛星株式会社 代表取締役社長、NPO法人宇宙空間産業研究会 理事長、有限会社Catch the Dreams 代表取締役、有限会社先端技術研究所
東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻にて博士課程取得後、宇宙科学研究所(現JAXA)の助手となる。大学院時代から宇宙科学研究所にて小惑星探査衛星「はやぶさ」に搭載されたイオンエンジンや次世代推進として期待される反物質推進に関する研究を行った。当時の所長が道工大に赴任したこともあり、1998年10月から北海道に移る。1998年に有限会社先端技術研究所を設立しマイクロ波エンジンの開発に着手し、2004年3月に完成させた。2003年4月から福島氏と共に北海道衛星プロジェクトを立ち上げ現在に至る。

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