今回紹介する論文は、私の父が30年ぐらい前から行っていた教育研究に関するものである。
一般に、人間の心理や本研究のテーマでもある精神発達に関する研究は、最初から法則性を追求することを諦めて、多変量解析という統計的手法を使って集めたデータを分類することをもって研究としての意義を見出そうとする研究者が多いように思われる。このようなアプローチは、ニーズ調査(マーケティング)や短期的に実施した試験の効果を測る指標には役立つかもしれないが、心の進化そのものを捉えてはいないだろう。
そういう研究が多い中で、この研究は人間観察を極めることによって、素人には見出せないような小さな変化の中から因果律の連鎖を発見し、それを定式化しようという斬新なアプローチをとっている。
この手法は個人の観察力(能力)と洞察力に大きく依存することから、従来の統計学に頼ったアプローチでは到達できない側面を内包している。このアプローチは私が以前に提案した「当為の科学」の世界観にも通じるものがある。
本研究では、まず精神発達という抽象的な概念を捉えるための研究の足場を作るために「作図法」を考案した。この方法により思考や精神発達の特徴的現象の連鎖を客観化し、更にその中に普遍性があることを見出した。(本論文には書かれていないが)現象論的に様々な具体事例の中で規則性が見出されていることは興味深い。
未来の教育学や発達心理学は、数学力、とりわけ現象論的な数学的手法(多変量解析だけではなく)を用いることにより、観念論から抜け出して、ヒトとしての精神発達の意義そのものに迫る方向に進むべきではないだろうか。本論文を読まれた教師や教育学研究者の中から、『臨床教育学』とでもいうべき新しい分野を切り拓く方が出ることを願うと共に、本研究論文の紹介としたい。
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『精神や思考の成熟に見られる臨界期の法則』
初等理科教育研究所
佐鳥毅
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I.序
子どもの発達や思考の規則性を見つめて50年の歳月が流れた。この間、いろいろなことを発見した。本稿では1985年1月2日早朝、浅い眠りの中で見つけた基本方程式について述べる。
当初は基本方程式で得た数列を2点延長法によって生涯精神発達のグラフの作成に熱中した。作図法は誤差が大きくグラフの精度に開運があった。そこで、現象論的な考え方で関数を作ることが得意な長男佐鳥新の助力を待て、基本方程式を変形して臨界点を計算で求める一般式を作った。(注1), (注2)
この一般式は、胎児の成長、幼児初期の発達、生涯精神発達、思考の成熟などの臨界点を正確に計算できることがわかった。臨界点が実際の現象とよく合うのは、各臨界期の成熟比が生得的プログラムと対応しているからだろう。臨界期のメカニズムに関する研究は緒についたばかりである。
その意味では、基本方程式や基本方程式を変形した一般式には『臨界期の法則』を思わせる特性が見られるが、まだ経験則の域をでない自然法則
する現象であることを考えてみたい。
である。本稿では2点延長法で作成したグラフや計算で得た臨界点を具体的に示して、発達・成熟の規則性は、数学的には種に固有な成熟比に対応する現象であることを考えてみたい。
II.本論
1.基本方程式
?式は、発達や思考の成熟に認められる規則性を数式で示せないか模索中、1985年1月2日早朝、浅い眠りの中で突如思い付いた式である。
当時、子どもの思考は一定の時間を経ると突如まとまってくること、その時間帯は全所用時間の約八割頃に当たることが気になっていた。また、孔子の発達観、ピアジェの発達観、生涯精神発達なども気になっていた。青森県教育センターに勤務していたこともあり、人間の発達や行動を何とかして客観的なグラフにしたいと願っていた。そうした思いや願いを抱き続けていたせいか、初夢に突如、孔子の「われ七十にして心の赴くところに従いて矩を越えず」という教えと、0.8の関係が?式の形ではっきり見えたのである。基準点(ピーク点)=70と臨界常数=0.8が?式の形で結び付いたわけである。直ぐ飛び起きて式をメモして電卓で数列を弾き、2点延長法による作図のチェックポイントを計算してみた。
縦軸を発達、横軸を年齢として、70を起点に図3のように縦軸を1センチずらしてプロットし2点延長法で結んだら、図1のグラフができた。
以来、多くの方にグラフを見せて意見を聞いてみた。グラフを眼にした方々は異口同音に一生が実によく表れていると感嘆していた。ただ、当時は成熟比とか、生得的プログラムという発想がなかったため、「なぜそうなるのか」といった素朴な疑問にうまく答えられなかった。この頃、大学で理論物理学や相対性理論を勉強していた長男佐鳥新は、「このグラフは数式で示せるかも知れない」と直感し、著者の要望を聞きながら、現象論的な方法で精神発達関数?を作成した。
図1 生涯精神発達
精神発達関数Iは上の仮定に基づいて作成した。計算の詳細は「仮称・臨界期の法則」の第3章に紹介してあるので、ここでは割愛する。(注2)
図2を見るとわかるように、生涯発達は発達率と退化率によって決まる。孔子の教えの70歳は生涯発達のピーク点であった。図1のグラフから孔子の教えや、日本古来の習わしである七五三、元服、成人の日、古希、喜寿などは生涯精神発達の変調点=臨界期と、ほぼ一致している。
基本方程式の?或は退化率=0という条件下で成立つチェックポイントを決める一般武であった。










