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「航空高専衛星KKS-1」
JAXA H2Aロケットへの搭載決定!!


2007年5月16日、JAXAは08年度夏に打ち上げ予定のH2Aロケットに搭載する副衛星6基を発表。都立産業技術高専の「航空高専衛星KKS-1」も見事選定されました。 他に“相乗り”の権利を得たのは、東京大、東北大、香川大の3大学と、東大阪宇宙開発共同組合、ソラン株式会社の5団体。打ち上げまでの1年強の間に、各団体とも設計図作成や環境試験などを経て最終モデルを完成させます。 高専の学生主体で開発した衛星が打ち上げられるのは日本で初の試み。世界最年少の衛星開発者たちの夢を乗せたキューブが、来夏、宇宙へと旅立ちます。

※詳細は同サイトのニュース記事を参照
DATA
所属学生:12名
指導教員:ものづくり工学科 航空宇宙工学コース講師 石川智浩先生
ものづくり工学科 情報通信工学コース教授 若林良二先生
設立:2004年4月
研究テーマ:超小型衛星の開発

 これまで、人工衛星の開発は国や国際機関を巻き込んでの巨大プロジェクトだった。しかし、この学校で開発に挑んでいるのは15歳から20歳の若者たち。そして彼らが作り出すのは、 手のひらに乗ってしまうほどの小さな衛星だ。 目標は2008年以降にJAXA(宇宙航空研究開発機構)が打ち上げるH2Aロケットへの搭載、 目指す将来像は「衛星を補修する衛星」の開発  。 「衛星いのち」とばかりに開発に青春を賭ける学生たちが、一辺15cmの立方体に壮大な夢を託す。


 
航空工業高専を前身とする荒川キャンパス。ものづくりのスペシャリストを輩出し続けている

アイデアだけの衛星づくりから、ホンモノの衛星開発へ

 都立産業技術高専は、都立航空工業高専(現・荒川キャンパス)と都立工業高専(現・品川キャンパス)の統合によって2006年4月に誕生した学校だ。「超小型衛星開発プロジェクト」が発足したのは、航空高専時代の2004年4月。「ロボットコンテスト」や「鳥人間コンテスト」の上位入賞校だった同高専が、衛星開発の分野にまで手を伸ばしたきっかけは何だったのか。 プロジェクトの指導教員を務める若林良二先生はこう語る。

 
学生たちは連日研究室に集って開発に没頭している   衛星の通信にかかわる分野を
指導する若林先生

「きっかけは『衛星設計コンテスト』でした。 ものづくりに携わる学生たちにとってよい経験になるということで、当時、航空高専電子工学科の主任教授だった島田一雄氏(後の同校校長、平成17年3月に停年退職)が旗を降り、第一回からアイデアの部に参加していました。 アイデアの部は実際に衛星の中身を設計したりつくったりする必要はなく、衛星に何をさせるかというアイデアを立ててモックアップ(模型)をつくるんです。 当初はそれをコンテストに出して賞を目指すというところで完結していたのですが、 あるきっかけから実際に人工衛星を開発してみようということになったんです」
 財団法人日本宇宙フォーラムが92年から開催している衛星設計コンテストは、設計の部とアイデアの部に分かれており、 毎年多くの大学・大学院や高専の学生たちがその発想や技術力を競っている。 初回から参加している航空高専は、「宇宙水族館」や「惑星探査ミッションのための宇宙通信ネットワーク」、宇宙でのカスピ海ヨーグルトの製造実験など、発想力とユーモアに富んだアイデアを応募。第4回でのアイデア大賞を始めとする、電子情報通信学会賞、宇宙科学振興会賞、日本機械学会賞などの賞に毎年連続で輝いている。
 そんな航空高専で「実際に衛星をつくってみよう」という話が持ち上がったのは2003年ごろのことだった。 契機となったのは、当時すでにカンサット(ジュース缶サイズの衛星型機体)の開発に取り組んでいた東京大学大学院工学系研究科・中須賀真一教授の講演だったという。 大型衛星に比べて低コストかつ短期間で開発・設計ができる超小型衛星に大きな可能性を感じた航空高専の学生達は、 島田先生の導きにより、すぐに中須賀教授をはじめとした東大の研究者たちからアドバイスを受け、カンサット開発への道筋を探っていった。
 そして開発の基盤が出来始めたころ、北海道工業大学で超小型衛星の研究開発に携わっていた石川智浩先生が着任し、さらに、JAXAから宇宙開発の専門家の宮野智行先生、東大から航空宇宙の専門家の中野正勝先生が同時に着任し、石川先生は、 超小型衛星開発の権威である佐鳥新氏(北海道工業大学助教授、当サイトでブログを掲載)の愛弟子ということもあって、 「これは百人力」とばかりに超小型衛星開発への士気が一気に高まり、2004年4月に超小型衛星開発プロジェクトが発足した。 実際に宇宙で運用することのできる“ホンモノ”の衛星をつくるべく、教授と学生たちによる壮大な開発計画がスタートしたのである。


オリジナル衛星「KKS−1」
JAXA・H2Aロケットへの搭載を目指して

 発足から3年経った現在、設立当時2名だったメンバーは12名に増え、若林、石川、宮野(航空宇宙工学コース)、中野(航空宇宙工学コース)先生の指導のもとで意欲的に活動している。 彼らが開発を進めているのはキューブサットといわれる立方体の超小型衛星で、大きさは一辺15cm、重さは約2kg。「航空高専衛星KKS−1」という名前がついている(Kouku-Kousen-Satellite -1の略称)。手のひらに載せられるほどの小さな箱だが、 この中にはリチウムイオン電池10個のほか、電子基板や地上局と通信するための無線機、地球の画像を撮影するカメラといった部品が詰まっている。

 
完成したばかりの電子機器搭載モデル  
 
 
衛星表面の太陽電池で光エネルギーを吸収し、内蔵のリチウムイオンバッテリに電力を蓄える。リチウムイオン電池は、携帯電話に使うものとまったく同様だという   1辺15cmの小さな立方体だが、人工衛星としての機能を果たすためのさまざまな部品が搭載されている
 人工衛星の機能として特徴的なのは、「超小型推進機マイクロスラスタ」と「3軸姿勢制御装置リアクションホイール」を装備していることだ。 マイクロスラスタ(同高専の航空宇宙工学コース 中野正勝講師研究開発)は 高出力レーザにより火薬を発火させる構造の推進機で、宇宙空間で衛星の高度を保ったり,並進移動させたりするときに使う。 リアクションホイールは、衛星の姿勢を変化させるための装置。通信のアン テナを地球方向などに向けるために使うものだ。この衛星ではマイクロスラスタの推力を測定するため,わざと衛星を回転させるようにマイクロスラスタを2機配置。ジャイロセンサで推力を測定した後は回転した衛星を逆にこのリアクション ホイールで止めたいという(安定した通信を行うため)。
 この衛星のミッションは主に次の3つ。

1. 地上局との通信
 高専の屋上を地上局とし、衛星の打ち上げ成功後に、アマチュア無線を使って衛星との通信を試みる。 高専の上空を通過するのは1回あたり長くてわずか15分間のため、その短時間に通信できるかがポイント。初めての打ち上げでは、「ここまでいけば万々歳」だという。

2. 地球画像の撮影
 衛星に内蔵されたカメラによって地球の画像を撮影し、地球局に送信する。 使用するカメラは、PHS電話機に外付けするタイプのもの。手作り衛星には、生活に身近な民生品も多く活用されている。

3. 宇宙を移動できる能力があるか確かめる
 マイクロスラスタによって推力が出ていれば成功。宇宙航行エンジンとして は最小クラスだという。

 衛星の開発はあくまでも学生が主体。構造体(ボディ)と電子基板だけは専門の業者に外注するものの、 プログラミングから設計、部品のハンダ付けまですべて学生たちが手分けして行っている。 開発環境は、構造体設計3DCADソフト、回路設計ソフトなどのPC環境を基本に、基板加工機、半田付け用簡易クリーンルームなどの回路開発環境のほか、マシニングセンタ、高真空試験装置、電波暗室、通信機器特性測定装置などの各種設備も整っている。

 
電子基板のICチップの埋め込みは、学生たちが手作業で行っている

 こうした本格的な環境のもとで研究開発を進めている同プロジェクトには具体的な目標がある。数年以内に打ち上げられるロケットへの搭載だ。
 JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2006年5月、2008年以降に打ち上げ予定のH2Aロケットに搭載する小型衛星を公募した。日本の宇宙開発利用の裾野を広げるため、大学や企業などに広く打ち上げの機会を提供するのが目的だ。いわゆる「相乗り」である。 この募集に手を挙げたのは21団体。航空高専のプロジェクトを含め、そのうち19件が「搭載候補リスト」に登録された。
 最終審査の結果は来月(2007年4月)発表される予定。 これまで、学生主体で開発した衛星の打ち上げを成功させた教育機関は、 東大、東工大、北海道工業大の3つ。「KKS-1」がH2Aロケットに搭載されれば、もちろん高専としては初、大学を含めても4例目の快挙となる。 世界最年少の宇宙開発者たちの夢が形になるか、メンバーたちは期待と緊張感を抱えながら発表の瞬間を待っている。


試行錯誤を通して、着実に成長していく学生たち

 超小型衛星開発プロジェクトのメンバーは、所属する学科も学年もバラバラだ。3学年からなる普通高に比べ、 5年生の高専の学生は15歳〜20歳までと年齢に開きがあるが、活動のなかでは先輩・後輩の壁を越えた自由な議論が交わされるという。 発足当時から学生たちの奮闘ぶりを見てきた石川先生はこう語る。

 
学科と年齢の垣根を越えてひとつの夢を追うメンバーたち   プロジェクトの実質的なマネージャーである石川先生は、学生たちが日増しに成長していく様子を間近で見てきた

「年上・年下は関係なく、みんな技術的な興味で目標に向かっています。 目指すところがひとつなので一体感があるんですね。 プロジェクトが立ち上がった当初はそれぞれ勝手におしゃべりしているだけという感じでしたが、 徐々にまとまりが出てきました。技術と同時に、メンタルな面も高まってきたんです。 教員の指示を待ってから動いていた学生も、だんだんと自立的に行動するようになって、今では学生たちで自主的に会議を開いて議論しています。 『ここが問題なんじゃないか』『こう直したほうがいい』とか、自分たちで課題を見つけられるようになったんですね。 ときには議論が白熱し、大口論に至ることもありますが、そうやってひとつひとつの課題を解決していくことが大切なんだと感じています」
 このプロジェクトはクラブや同好会と同じ位置づけにあるため、当然、授業が終わってからの活動となるし、テスト期間中は研究開発をストップしなければならない。それに、たとえプロジェクトで成果を挙げても成績が良くなるわけではない。それでも、「衛星いのち」のメンバーたちは土日も夏休みもなく研究に明け暮れる。卒業を間近に控える電子工学科5年の徳永宏君(平成19年度から島根大学・総合理工学部・電子制御システム工学科に編入)もその一人だ。
「東大や道工大の実績があったので、学生にも衛星の開発ができるんだと思ってプロジェクトに参加したのですが、 思ったよりずっと大変でした。失敗してはやり直しの繰り返しで、なかなか前に進まないんです。 それでも、自分の作ったものが形になって動くのはすごく面白い。もうすぐ卒業してしまいますが、 このプロジェクトの衛星はずっと注目していきたいと思います」

 
卒業を間近に控える電子工学科5年の徳永宏君。研究づけの学生生活で得たものは大きいはずだ

 一般的に、大学や大学院には研究するための環境やチャンスが用意されているが、 高専の学生が実際にモノづくりに携われる機会は多くはない。 学びながら開発に関わることができるこのプロジェクトは、宇宙開発を志す学生にとっては魅力的な場所といえるのだ。
「このプロジェクトで過ごす期間は、学生たちにとってある意味で現実と向き合うときでもあるし、思う存分夢を追えるときでもある。 プロジェクトでの活動を通して、研究開発の難しさや楽しさを知ってもらえたらと思います」(石川先生)


夢は世界初の「衛星補修用ロボット」をつくること

 超小型衛星の可能性が注目されはじめたのはここ10年ほどのこと。 開発に数百億円を要する大型衛星に比べ、その数百分の一のコストで開発・設計ができるということから、 宇宙開発を志す人たちにとって人工衛星はぐっと身近になった。実用化へ向けては課題も残るが、超小型衛星の可能性は大きく広がっている。

 将来的に考えられる用途としては、次のような例がある。
・地震検知
・環境監視
・宇宙探査
・気象予測
・農業観測
・野生動物の生態観測
・宇宙からの動画配信

「KKS-1」の開発を進める高専のプロジェクトにも、目指している将来像があると石川先生は説明する。
「まだまだ先の話になりますが、いずれは人工衛星補修用のロボットを開発できたらと考えています。 つまり、衛星を修理するための超小型衛星ですね。人工衛星を打ち上げた際に何らかの事故が起こったとき、 現状ではその原因を推測することしかできないんです。 『おそらくパドルが開かなかったんだろう』とか『太陽電池が開かなかったんじゃないか』とか。そうしたときに補修用の衛星がそばにあれば、 トラブルを修復してそのまま継続して運用することができるかもしれないと考えているんです」
 たとえば衛星の端に超小型衛星をつけておいて、トラブルが発生したときに衛星の周りをまわらせて原因を究明したり、 もしくは補修することができれば、何百億のお金を無駄にすることなく継続して運用させることができる。 現在、これに類似するメンテナンス衛星もあるにはあるが、かなり大型のため、衛星が故障したらその都度そばまで近づける必要がある。 もしも超小型衛星でこのような役割が担えれば、いわば「町医者」のような存在として衛星を守ることができるのだという。
 現在、超小型衛星はまだ研究開発・実験レベルにとどまっているが、 同高専などの研究機関での成果が実を結べば、いずれはビジネスモデルとして展開させていける可能性も大いにある。
「超小型衛星の開発技術が確立されて、衛星の打ち上げ・運用が高い確率で成功するようになれば、その衛星に載せられるアイデアはさらに広がります。 ある程度、コストに見合ったリスクで宇宙開発ができるんです。 そうすると今度は企業が着目し、これまで研究の対象だった超小型衛星にビジネス的なシーズが生まれてくる。 うちの学校のプロジェクトが、そのさきがけになっていければいいなと思います。学生たちには、固定概念に極力とらわれないで突き進んでほしい。 宇宙開発の裾野を広げた後にどうビジネスにどうつなげていくかを見据え、人々のために役立てるような研究をしてもらいたいと願っています」(石川先生)
 無限の可能性を秘めた超小型衛星開発プロジェクト。小さなキューブに夢と青春を賭けた学生たちの挑戦は続く。
 

東京都立産業技術高等専門学校


【沿革】
06年4月1日に都立航空工業高専と都立工業高専の統合により開校。

【所在地】
荒川キャンパス 
116-0003 東京都荒川区南千住8-17-1
品川キャンパス
140-0011 東京都品川区東大井1-10-40

【学科・コース】
ものづくり工学科(本科:5年)
品川キャンパス
・機械システム工学コース
・生産システム工学コース
・電気電子工学コース
・電子情報工学コース

荒川キャンパス
・情報通信工学コース
・ロボット工学コース
・航空宇宙工学コース
・医療福祉工学コース

創造工学専攻科(専攻科:2年)
・機械工学コース
・電気電子工学コース
・情報工学コース
・航空宇宙工学コース

【URL】
http://www.metro-cit.ac.jp/

【超小型衛星開発プロジェクトHP】
プロジェクトの活動内容や衛星開発の進捗状況を紹介している
http://www.kouku-k.ac.jp/~kks-1/
   

  

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