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加速化するラピッドプロトタイピング・テクノロジー “3Dプリンタ”に注目
「第19回設計・製造ソリューション展」


製造業向けITソリューションの専門展である「設計・製造ソリューション展」が、2008年6月25日から27日の3日間東京ビッグサイトで開催された。同時に開催された「産業バーチャルリアリティ展」と「機械要素技術展」を合わせると1625社が参加する日本の製造業関連の最大イベントとなった。
今回のEVENT REPORTは「設計・製造ソリューション展」から、現在の設計開発における最新テクノロジーである“3Dプリンタ”にスポットを当て取材した。


東京ビッグサイト東ホールの第19回設計・製造ソリューション展会場

 

光造形法以外の3次元造形方式で実用化が進む

設計・製造ソリューション展の展示会場は東京ビッグサイトの東ホールを使って開催されたが、会場の東1〜3ホールの約80%を設計・製造ソリューション展が占め、残り20%を産業バーチャルリアリティ展が使用していた。このように出展社の数の減少からも、ここ数年バーチャルリアリティ技術の産業への実用化はペースダウンしているように見える。 製造業のバーチャルリアリティ技術への期待と熱気は、今回の会場からはラピッドプロットタイピングの最新テクノジーとして注目されている“3Dプリンタ”に集まっていた。

現在では製品開発において短期間(Rapid)に試作品を製作(Prototyping)し、製造から製品の市場投入までを短縮化をめざす”ラピッドプロトタイピング”による設計製造が主流となっている。3次元CADの設計データをそのまま3次元の立体物としてプリントできる “3Dプリンタ”がその価格低下に伴い、設計現場で今一番の注目技術となっている。

 

80年代後半に実用化された紫外線照射により液体樹脂を積層硬化して作成する“光造形機”がラピッドプロトタイピングを牽引してきた。また、この“光造形機”は非常に高額(1千数百万円〜数千万円)な装置だった。90年代半ばから開発が進み2000年以降様々な3次元造形法による造形機が実用化され、その中でも低価格、コンパクトな製品が“3Dプリンタ”として登場してきた。

この3D CADデータを立体造形化するラピッドプロトタイピングでは、積層造形法による立体造形が主流だが、実際に成型物を作成していく技術はいくつかの方法がある。先行した“光造形法”以外に、粉末を焼結または接着剤により増状に固めていく“粉末積層法”、シート状の素材をカッティングし積層していく”シート積層法“、インクジェットプリンタの技術を応用し、素材をノズルから層状に噴射して形を作成する”インクジェット法”、材料をノズルから吹き出しながら一筆書きのように形を積層して作成する“押し出し法”などの技術が実用化され、3次元造形装置として製品化されてきた。



今年の「設計・製造ソリューション展」では、ラピッドプロトタイピング関連製品・サービスの出展エリアが設定された。ここに展示紹介されていた3次元造形装置のうち、今回は特に小型・低価格で設計部門のオフィスで利用されるよう製品化された“3Dプリンタ”と呼ばれる製品についてレポートする。


    
人混みでにぎわうラピッドプロトタイピング・3Dプリンタゾーン

低価各化が進むラピッドプロトタイピング造形装置

ラピッドプロトタイピング・3Dプリンタゾーンに出展されていた“3Dプリンタ”は、6社のメーカー(日本販売総代理店も含む)が9モデルを展示していた。

イスラエルに本社を置くObjet Geometries社の「CONNEX500」とオフィス向けモデルの「EDEN」の2モデルは、日本販売代理店のアルテック(株)と(株)ファソテックのブースで展示されていた。日本での導入台数も多いコンパクトな「EDEN」は、専用の樹脂粉末カートリッジと硬化剤カートリッジを装填、粉末素材と硬化剤を噴射積層造形する“インクジェット法”である。造形可能なサイズは「EDEN250/260」のX25.4×Y24×Z20cmから「EDEN350/500V」のX49×Y39×Z20cmとなっている。「CONNEX500」も同じ“インクジェット法”による方式だが、「EDEN」シリーズとの違いは、半透明樹脂と彩色樹脂と組み合わせた造形や、硬質樹脂と軟質樹脂など性質の異なる素材を組み合わせた造形が可能な機能が加わっていることだ。


インクジェット法”によるObjet Geometries社の「EDEN250」

輸入元である丸紅情報システム(株)と販売代理店の日邦産業(株)の2社が展示していた米国stratasys社製の3Dプリンタ「Dimension」シリーズは、「bst768/sst768」(造形サイズ:X30.5×Y20.3×Z20.3cm)、「Elite」(造形サイズ:X30.5×Y20.3×Z20.3cm)、「bst1200es/sst1200es」(造形サイズ:X30.5×Y25.4×Z25.4cm)の3モデルが展示されていた。この3モデルとも造形方式は、メーカーでは熱溶融積層法(Fused Deposition Modeling:FDM方式)と解説しているが、先の造形方式の分類では“押し出し法” と呼ばれるものだ。この方法では樹脂カートリッジとサポート剤カートリッジの二つの素材を熱で溶かしノズルから噴出しながら、上方向に積層固着して造形物を作成する。樹脂はABS樹脂を使用しており、様々なカラーに着彩された樹脂での造形ができるため、樹脂性の製品の場合完成品に近い試作品が作成できる。素材は米国では多く利用されている方式だが、今後は国内においても普及が進んでくるだろう。

 
 
「Dimension」(左)で作成されたモデルガン(右)は、内部機構も一体造形される
 

米国3D Systems社(日本法人:株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン)のブースでは、主力の大型光造形装置の他に“3Dプリンタ”のマルチジェットモデリング(MJM)方式の「ProJet HD 3000」(造形サイズ:X29.8×Y18.5×Z20.3cm)を展示していた。このマルチジェットモデリング(MJM)方式は3D Systems社の特許技術であるが、“3Dプリンタ”の方式としては 樹脂素材カートリッジとサポート剤カートリッジを使用しており、“押し出し法”に分類されるものだ。  

 
    
3D Systems社の「ProJet HD 3000」はMJM方式で造形される

輸入元の(株)シーケービーが展示していたドイツenvision TEC社製の“3Dプリンタ”は「Perfactory3」(造形サイズ:X8.4×Y6.3×Z23cm〜X17.5×Y13.1×Z23cm)だ。展示プレートには”高速可視光面造形装置“と表示され、メーカーでは造形方式を”Perfactory“方式と呼んでいた。これは、プロジェクターランプから照射される可視光により液体樹脂を固めていく独自の方式だ。これは硬化用のサポート剤を使用していない変わりに、樹脂素材を下から可視光を照射して一層ずつ積層硬化させていく“押し出し法”のひとつだ。


 
envision TEC社の「Perfactory3」は、可視光による積層硬化で立体造形を作成
 
 

(株)DICOのブースではフルカラー“3Dプリンタ”として話題を集めている米国Z CORPORATION社のZ Prinrerシリーズ「Z Printer 450 System」(造形サイズ:X20.3×Y25.4×Z20.3cm)と、米国Solidscape社の「T76」の2モデルを展示。「Z Printer 450 System」で試作デモンストレーションを行っていたが、人だかりも多く注目を集めていた。造形方式は石膏粉の粉末を接着剤により増状に固めていく“粉末積層法”と呼ばれる方式だ。造形は装置の造形トレイに造形素材の石膏粉をセットし、3次元設計データを層状に石膏を接着剤で固めることで、縦方向に立体造形物が成形される。「Z Printer」の特長はフルカラーとうたっているカラー着色機能にある。素材への着色は積層造形中に同時にインクヘッドから噴射されることで造形物の表面だけでなく、切断面の中まで着色される。また、表面への文字印刷も可能だ。ブースでの造形デモンストレーションを見ると石膏粉の中に、カラーの立体造形物が徐々に作成される。仕上がりはその粉の層から余分な粉をふるい落とし造形物を取り出す。「Z Printer 450 System」では254色を再現可能で、造形スピードもX8×Y8×Z5cm程度のサイズなら約2時間で造形できるということだ。

DICOのブースのもう一つの“3Dプリンタ”は、樹脂素材とサポート剤を使用する“押し出し法”方式の米国Solidscape社製の「T76」だ。造形サイズはX15×Y15×Z10.1cmだが装置本体はレザープリンタ程度の大きさで、本当の意味でデスクトップサイズと言えるサイズだ。

 
 
Z CORPORATION社のZ Prinrer(左)と、米国Solidscape社の「T76」(右)
 

普及が進む3Dプリンタのこれから

各社の3Dプリンタの価格は500〜800万円台が中心だが、コンパクトなモデルでは3百円万台に低下してきたモデルも出てきており、設計のチーム単位など小規模な単位での導入も可能となってきている。実際には積層剤カートリッジの消耗品や、造形システムのアプリケーションソフトウェア、装置のメンテナンス費用などの費用も必要だ。まだまだ通常のインクジェットプリンタを購入するようにはいかないが、今後も新技術の開発で様々な方式の製品も登場し、低価格化が進むことで多くの設計開発現場に導入されていくだろう。

さらにもっと進化した“3Dプリンタ”によって、市販される製品そのものが、 “3Dプリンタ”で 製造されていくようになるだろう。用途も製造業だけでなく、医療現場では骨の手術を行う際に、健常な骨を3次元スキャンしたデータを元に人骨に近い素材で“3Dプリンタ”でコピーを作成し、その骨を使って手術を行うなどの研究もすでに行われているという。歯科医療では歯のコピー作成などが実用化の視野に入ってきている。また、現在の印刷領域においては、小ロットの印刷の場合、オフセット印刷などの大量印刷のプロセスを介さず、従来のカラープリンタ技術を応用したオンデマンド印刷の需要も多くなってきている。この印刷業と同じように、製造業の場合もおいても小ロットの製品の場合、“3Dプリンタ”が直接製品の製造装置となっていく日も近い。

 
 
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